様々な問題を抱えるマイナンバー制度ですが、リスクの点では、国家公務員を対象とした「個人番号カードと国家公務員身分証との一体化」が極めて大きいものがあります。今一度考え直す必要があるのではないでしょうか?以下は全経済労組特許庁支部機関紙「おはようNO19(2月18日付け)」からの転載です。
個人番号制度(マイナンバーカード)と国家公務員
マイナンバーカード申請された方の受け取りが始まる頃となってきましたが、マイナンバーカードの問題点は?
(1)個人番号とその利用範囲
個人番号制度は、住民基本台帳ネットワークの住民票コードを変換して、12桁の個人番号を個人に強制的に割り付け、社会保障、税、災害対策の分野で関係する行政機関がそれぞれ保有する個人情報と個人番号とを結びつけて、「特定個人情報(個人番号を含む個人情報)」として管理するものです。
割り振られた個人番号は、地方自治体からの通知カードにより本人に通知され、2016年1月から利用が開始されます。その際、希望者には、ICチップ搭載で顔写真付きの個人番号カードが地方自治体から発行されます。
個人番号の利用範囲は、設立時の「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(個人号法)」では、①社会保障制度、②税制、③災害対策の行政分野と限定されていましたが、利用開始前の2015年9月に個人番号法が「改正」され、預貯金口座や健康診断などへの利用も可能になりました。
(2)メリットに乏しい個人番号制度
政府は、個人番号制度によって、①行政手続きの簡略化、②行政の効率化、③社会保障給付の公正な運用、④税の公正な運用などにメリットがあることを強調していますが、以下のリスクとは釣り合わない内容です。
(3)リスクを100%回避することは出来ない制度
政府は、個人番号制度の運用にあたって、制度面とシステム面で保護措置を講じているから「安全」であると主張しています。
制度面の保護措置は、第三者機関である特定個人情報保護委員会を設置して、特定個人情報の取り扱いについて行政機関などを監視・監督するとしていますが、監視だけで情報漏洩等のリスクがなくなるわけではありません。
しかも、国や地方自治体のシステムのセキュリティレベルは、バラバラであり、完全ではないうえに、情報処理技術は日進月歩で、高度なセキュリティ対策を講じたとしても、100%の安全はあり得ないというのは、この分野の常識です。
(4)個人情報の携行が強制される身分証との一体化
政府は、個人番号カードと国家公務員身分証との一体化を推進しようとしています。
個人番号カードは、ICチップを内蔵し、個人番号、氏名、住所、生年月日などが記載され、利用範囲を広げれば広げるほど、個人の情報が集積されます。そのため、個人番号法ではカードの取得は任意とされています。
他方、国家公務員身分証(職員証)は、身分証として使用する職員はごく少数で、庁舎のセキュリティゲートを通過するためのものであり、他の機能はなく、これまでの身分証で何の問題も生じていません。それなのに個人番号カードを身分証として一体化すれば、紛失するリスクを日々負いながら、携行を強いられるという矛盾した事態になります。
政府は、本来任意である個人番号カードを全職員に職務命令のもとで強制的に取得させ身分証と一本化しようとしています。これは、職員情報を管理し、監視下への第一歩かもしれません。