「『非正規』という言葉使うな」の根本厚労大臣内指示メールに関わって意見が交差 野党ヒアリングではすでに撤回 まず大事なのは均等待遇
総務省の「労働力調査」でも、「非正規」という言葉が使われていますが、「非正規」という言葉は、語感からはあまり好ましい印象は与えません。これまでも色んな方々から呼称を変えてみてはとの提言もありました。ところで厚生労働省が省内の全部局に、根本匠厚労相の指示として「非正規」や「非正規労働者」という表現を国会答弁などで使わないよう求める趣旨の文書やメールを通知していて、東京新聞が情報公開請求した後に撤回していたことが判明しました。(9月1日)
同省担当者は撤回の理由を「不正確な内容が散見された」と説明し、同時に根本氏の関与はなかったとしているとのことです。
9月3日には野党合同ヒアリングで
9月3日の野党合同ヒアリングでも、厚生労働省が「非正規」や「非正規労働者」という呼称を用いないように指示するメールを出していたことが明らかになりましたが、同メールは、同省の雇用環境・均等局の担当者名で今年4月にだされたものとのことです。ヒアリングでは、野党議員の指摘に対し、同省の担当者が「メールについてはすでに撤回している」などと説明しました。
メールは「『非正規雇用労働者』の呼称について」という件名で省内に通知。「『非正規雇用』のネーミングについては、これらの働き方には前向きなものがあるにもかかわらず、ネガティブなイメージがあるとの大臣の御指摘があったことも踏まえ、当局で検討していたところ」として、「今後の国会答弁等においては原則として、『パートタイム労働者』『有期雇用労働者』『派遣労働者』(三者をまとめる場合は『パート・有期・派遣労働者』等)という呼称を用いる」「『非正規』のみや、『非正規労働者』という言葉は用いない」としています。
厚労省の担当者は「『大臣の御指摘』というところは、事実と異なる」などと弁明しましたが、野党議員は、安倍晋三首相が国会答弁で「『非正規』という言葉をこの国から一掃する」と繰り返してきたことなどを指摘し、「安倍首相が無責任なことをいって現場の職員が迷惑を被っている」などと批判しました。
「非正規という言葉をこの国から一掃する」(安倍首相)への忖度?
正社員と非正規労働者の不合理な待遇差の解消は、私たちにとっても喫緊の課題ですし、安倍政権に課せられた重要政策課題になっています。安倍晋三首相自身も「非正規という言葉をこの国から一掃する」と強調してきました。しかし安倍首相のこの言葉とは裏腹に非正規労働者は増加の一途ですし、「正規の非正規化で非正規という言葉の一掃か?」が本音か?と疑いたくもなります。さらには厚労大臣指示も、安倍首相の「非正規という言葉をこの国から一掃する」への忖度か?と勘ぐってしまいます。いずれにしても厚生労働省が「非正規」との表現を使わないことを文書やメールで省内に通知したのは、それだけ表現に神経質になっている事だけは間違いないでしょう。
総務省の労働力調査(詳細集計)によると、役員を除く雇用者に占める非正規労働者は、第二次安倍政権発足当初の2013年で年平均1,910万人(36・7%)でしたが、2018年には約2,120万人(37・9%)に増加しました。
同一労働同一賃金、働けば正社員が当たり前の雇用条件の確立こそ
非正規労働者は、正社員に比べて賃金や社会保障などの面で待遇が悪く、格差拡大や貧困の問題と結び付いています。企業には都合の良い「雇用の調整弁」との厳しい指摘もあります。労働問題に詳しい法政大の上西充子教授は、厚労省の文書について「非正規という言葉だけをなくしてしまえ、という取り組みに映る。正社員になれず社会的に不遇な立場にある非正規労働者を巡る問題の矮小(わいしょう)化につながりかねない」と指摘しています。(東京新聞9月1日付朝刊)
問題の核心は、「働けば正社員、同一労働には同一賃金が当たり前の雇用条件」の確立ではないでしょうか?東京国公は官民共同の闘いをさらに広げて、その核心的要求の実現の為に奮闘したいと思います。